■ どこからどこへのサイバー攻撃か──ハッカーグループの所在と攻撃対象

今回のサイバー攻撃は、中国政府とつながりがあるとされる国家支援型のハッカーグループが、アメリカの国家核安全保障局（NNSA）を含む複数の政府機関や関連組織を標的としたものです。

Microsoftによると、攻撃を行ったのは「Linen Typhoon」「Violet Typhoon」「Storm-2603」などと呼ばれるグループで、いずれも中国本土から活動しているとされています。被害はアメリカ国内にとどまらず、ヨーロッパ、中東、アフリカの政府系機関にも広がっていると報告されています。

■ サイバー攻撃の概要──SharePointの脆弱性を突いたゼロデイ攻撃

攻撃者は、Microsoftが提供するオンプレミス型のSharePointに存在していた「ゼロデイ脆弱性（未修正のセキュリティ欠陥）」を悪用しました。これにより、パッチが適用されていないシステムに対し、認証なしで外部からのアクセスが可能となり、情報流出やネットワーク内の横展開（ラテラルムーブメント）が実行されたと見られています。

Googleの脅威分析チームはこの脆弱性について、「一度侵入されれば、将来のセキュリティ更新をすり抜ける持続的なアクセスが可能になる」と警鐘を鳴らしています。

NNSAに対する攻撃は7月18日に確認され、同局が所属する米エネルギー省は「影響は最小限だった」としつつも、複数のシステムが一時的に影響を受けたことを認めています。

■ 何を目的とした攻撃か──国家機密・情報収集の可能性

今回の攻撃の直接的な被害内容について、米政府は「機密情報が流出した証拠はない」としていますが、攻撃の性質上、目的は高度な情報収集活動と考えられています。

NNSAは米国の核兵器管理・配備・近代化を担う機関であり、軍事機密や技術文書、内部ネットワーク情報などが格好の標的になります。また、攻撃対象には教育省や地方政府も含まれており、より広範な情報収集ネットワークの一環とみられています。

こうした国家支援型の攻撃は、単なるデータ窃取だけでなく、将来的な外交交渉や軍事戦略への影響力行使をも視野に入れて行われている可能性があります。