🧠 そもそもハッカーとは？──技術者か、犯罪者か

「ハッカー」と聞くと、パソコンの画面を高速で操作しながら機密データに侵入する“サイバー犯罪者”のイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし本来、ハッカーとは高度なITスキルを駆使してシステムの構造を理解・操作する技術者全般を指す言葉です。

厳密には、次のように分類されます：

• ホワイトハットハッカー：防御・セキュリティ向上のために活動する「善意のハッカー」
• ブラックハットハッカー：不正アクセスや金銭目的など、違法な活動を行う「悪意のハッカー」
• グレイハットハッカー：法的にグレーな領域で活動する中立〜悪寄りの存在

特に国家が関与する「APT（Advanced Persistent Threat）」グループは、極めて組織的かつ継続的な“ブラックハット”型の活動を展開しています。

🎯 ハッカーの目的とは？──情報は「資源」になる

現代のハッカーが狙うのは金銭だけではありません。彼らの活動目的は多岐にわたります：

• 国家機密や軍事情報の窃取（スパイ活動）
• 技術設計図・知的財産の入手（産業スパイ）
• インフラ破壊・混乱の誘発（サイバーテロ）
• ビットコインや仮想通貨の奪取（マネタイズ）
• 身代金要求（ランサムウェア攻撃）
• 政府・企業・個人の監視（諜報目的）

こうした目的に応じて、“ハッカーが雇われる”ケースも多数存在します。
例えば、国家支援型のAPTグループは、政府機関や軍から予算と命令を受けて行動する「サイバー工作員」のような存在です。一方で、民間の犯罪組織や闇市場が雇うケースもあり、報酬は仮想通貨や他国への逃亡手段、特権的な技術リソースなど多様です。

🧑‍💻 ハッカーはどこで技術を身につけているのか？

ハッカーは生まれつきの天才なのでしょうか？ 実際には、多くのハッカーは次のようなルートで技術を獲得しています：

✅ 一般的な例：

• 幼少期からプログラミングに触れ、独学で技術を磨く
• オープンソースやハッキングフォーラムで知識を吸収
• CTF（Capture The Flag）と呼ばれるハッキング大会への参加

🏫 国家や軍主導の教育も存在：

• 中国やロシア、北朝鮮、米国などでは、政府がサイバー部隊を養成する専門教育機関を保有
  • 例：ロシアの「GRU 74455部隊」、北朝鮮の「大学を装ったサイバー兵学校」、米国NSAの「サイバーセキュリティスカラーシップ」など

つまり、独学と組織的育成の両面から“サイバー人材”が生まれているのが現状です。

🌍 世界各国に実在する有名ハッカーグループ

■ Lazarus Group（北朝鮮）

北朝鮮が支援するとされる有名なサイバー犯罪集団。
金融機関や仮想通貨取引所を標的とした窃盗が主な目的で、数億ドル規模の被害が報告されています。
2014年にSony Picturesへの大規模サイバー攻撃を行ったことで世界的に知られるようになりました。

■ Sandworm Team（ロシア）

ロシアの軍事諜報機関（GRU）とつながりがあるとされる集団で、国家インフラに対する破壊的な攻撃を行うことで悪名高い存在です。
特に2015年以降、ウクライナの電力網に対する攻撃や、世界的なマルウェア「NotPetya」の拡散にも関与しています。

■ APT41（通称：Double Dragon｜中国）

中国政府の支援を受けながら、民間の金銭目的の攻撃も同時に行う“二刀流”タイプのハッカーグループ。
医療、製造業、ゲーム産業などを標的とし、知的財産の窃取に加え、攻撃による収益化も行っています。

■ Charming Kitten（APT35｜イラン）

イランを拠点とし、政治活動家、研究者、外交関係者などを標的にしたフィッシング攻撃で知られています。
巧妙な偽メールやSNS経由のなりすましを使い、機密文書や個人データへのアクセスを試みます。

■ Linen Typhoon（別名：Storm‑0558｜中国）

中国の国家系スパイ活動を担うとされ、米国政府やインフラ系企業への長期的な諜報活動が主な目的。
MicrosoftはこのグループによるSharePoint脆弱性のゼロデイ攻撃を正式に認定し、国家レベルの関与を明らかにしました。

■ Conti / Lockbit（ロシア系中心の国際集団）

特定の国家に属さず、金銭目的で活動するランサムウェア犯罪集団。
企業や病院、自治体などにマルウェアを送り込み、データを暗号化したうえで身代金を要求する手口で知られています。
特にロシア語圏にルーツを持つメンバーが多く、国際的な摘発の対象となっています。