「米の価格が高騰中:原因・推移・今後の見通しとは」

止まらぬ米価格高騰──供給不足と制度の壁が生む混乱
- コメ価格の高騰が全国で続いており、あきたこまちやコシヒカリなどの銘柄米は、取引価格が前年の2倍以上に達しています。精米価格も過去最高値を更新し、政府が備蓄米を放出しても値下がりの兆しは見られません。消費者の不満が広がる中、農水大臣が謝罪する事態にもなっています。
- 背景には、全国的な在庫不足があります。農水省の発表によると、2025年2月の民間在庫は205万トンで、前年同月より39万トンも減少しました。この水準は過去と比較してもかなり低く、市場では引き続き“供給不足”の感覚が根強く残っています。
- 一方で、備蓄米は存在するものの、それが十分に市場に流通していないという問題も浮上しています。農水省が売却した備蓄米は、大手卸業者を通じてコンビニや外食産業に優先的に供給され、中小のスーパーや米穀店には届きにくい構造です。実際、3月下旬までに市場に流れた備蓄米は、落札総量のわずか1%ほどに留まりました。
- この流通の偏りには制度的な要因もあります。全農は備蓄米の取扱に関して、卸業者に「玄米の販売は禁止」とする厳しいルールを設けています。23ページにも及ぶガイドラインや複雑な条件が、小売店にとって仕入れのハードルとなっており、結果的に市中に米が出回りにくくなっています。
- こうした声を受けて、農水省は2024年4月に制度を一部改正し、小売店も備蓄米を仕入れられるようにしました。しかし、制度の複雑さと既存の流通ルールの硬直性は今も残り、根本的な改善にはさらなる見直しが求められています。
- 米という生活の根幹を支える食材の価格がここまで上がり続ける現状は、単なる天候や一時的な需給では説明しきれません。制度の歪みと市場構造の課題が、今まさに国民の食卓を直撃しています。
笑いが止まらない全農と農水省──備蓄米ビジネスの裏側
- 政府と全農が主張する「適正価格での備蓄米販売」の裏で、JAグループ全体が流通の各段階に深く関与し、利益構造を築いている現実が見えてきました。農水省は、全農から卸への備蓄米の販売価格を60kgあたり2万2402円と発表し、「利益は取っていない」と説明していますが、実際には金利は農林中金、物流は全農物流、発注はアグリネットサービス、卸は全農パールライス、小売はAコープと、JAグループが一貫して関与する構造となっています。
- さらに、卸から中食・外食・小売業者への販売価格は3万4023円と、1俵あたり1万2000円も上乗せされた形です。これでも農水省は「転売目的の価格操作は見られない」と評価しており、まさに“笑いが止まらない”という声も聞かれます。
- 加えて、農水省自身も巨額の利益を得ている可能性があります。23年・24年産の備蓄米を平均1俵1万3000円で買い入れ、2万1217円で売却したことで、1俵あたり約8000円、21万トンで合計280億円の利益を得た計算になります。税金で安く仕入れ、供給を抑制し、税金で価格を吊り上げて高く売るという構図は、国民の生活を直撃しています。
- 海外からもこの状況は注目されており、新潟のコメ輸出協議会が台湾で日本米の価格交渉を行った際、台湾側から「よく日本では暴動が起きませんね」と皮肉られたというエピソードも。主食である米が2倍の価格になっても、騒動が起きないのは日本ぐらいだろうと、改めて社会構造の特異性を浮き彫りにしています。